ふぎと屋【溺書ブログ】

「色んな本が読みたい」「もっと深い読書がしたい」あなたのための溺書ブログ。見たい記事を見たいだけどうぞ。

カルロ・ロヴェッリ『時間は存在しない』(NHK出版)#56

ジェームズ・フレイザー『金枝篇』で、フレイザーは中部イタリアのネミに伝わる物語に注目した。その伝承によれば、かつてネミの森には女神ディアーナに仕える祭司がいて、「森の王」の称号をもっていた。もし誰かがこの祭司に代わって新たな森の王になろう…

中村文則『去年の冬、きみと別れ』(幻冬舎文庫)#55

この一文を読んでほしい。中村文則『去年の冬、きみと別れ』の作中で示される、死刑囚の手紙の一文だ。 もうこんな自分なんて死んでしまえばいいって普段は思ってるのに、やっと死ねると思ってるのに、突然、こんな風に急に怖くなるんだ。僕は何もしてないの…

石飛道子『空の論理』(サンガ文庫)#54

「わたし」を空じて想像する 想像力と空の発見 SF作家のJ.G.バラードは、地球上に残された最後の資源は「想像力」だと言ったという。そのことが心に引っかかっているときに、長浜バイオ大学で数理物理学をやっている西郷甲矢人氏の『圏論の道案内』(技術評…

吉本ばなな『スウィート・ヒアアフター』(幻冬舎文庫)#53

ひそやかな鎮魂・ささやかなエール 同じように聞こえているけれど、子どもたちはきっと同じではない、卒業したり入学したりして、確実に入れ替わっているのだ。私の細胞もきっとあのときとは違ってほとんど入れ替わっている。だから今は今なんだ。そう思った…

多和田葉子『エクソフォニー』(岩波現代文庫)#52

副題「母語の外へ出る旅」 「エクソフォニー」ってなんだろう。ぼくがこの本を手に取ったときの最初の「?」はそこだった。 これまでも「移民文学」とか「クレオール文学」というような言葉はよく聞いたが、「エクソフォニー」はもっと広い意味で、母語の外…

松岡正剛『情報生命』(角川ソフィア文庫) #51

知のメディア「千夜千冊」 突然だが、この記事の読者は千夜千冊という Web サイトをご存じだろうか。すべてのものを情報としてとらえる「編集工学」の創始者、松岡正剛が運営する「知のメディア」だ。何を隠そう、ぼくはこの千夜千冊が大好きなのだ。このブ…

円城塔『Boy's Surface』(早川書房) #50

某人による超文脈的解説 ハーバート・クエインがロスコモンで死んだ。「タイムズ」誌の文芸付録はわずか半年の追悼記事をのせただけであり、そこには、副詞によって修正されていない(すなわち、厳しい説諭を受けていない)形容詞はひとつもないことを知っても…

メアリアン・ウルフ『プルーストとイカ』(インターシフト) #49

この記事から学べる事 現代に通じるソクラテスの批判 『プルーストとイカ』の要旨 文字が読めることの「異常さ」 文字が読めるという神秘 初めて文字が読めることに気づいたのはいつだっただろうか。ぼくにはそのあたりの記憶があまりない。そもそも幼少期の…

【ピリ辛の沼】水野仁輔『スパイスカレー事典』(パイ インターナショナル) #48

料理が好きだ。平日の夜、仕事から疲れて帰ってきたときも一品はつくる。ぼくにとってはそれが気分転換のナイトルーティーンのようになっている。 こうまで料理に熱をあげることになったきっかけは、参加しているオンラインサロンの「ごはん部」に入ったこと…

『本―TAKEO PAPER SHOW 2011』(平凡社) #47

9月下旬の4連休、ぽつぽつと雨が降ってきそうな曇りの日に、JR八王子から京王八王子へと向かう道沿いのBOOKOFFで気になる本を見つけた。「本」の名を冠した本。その浩瀚さ、装丁の独特さに惹かれてふと手に取った。 表紙にはこうある。 紙に定着された「物体…